SCENE

誰かの朝、誰かの夜。 すれ違う時間の中に、物語はひっそりと立ち上がる。 喜びや痛みが言葉になる前の、かすかな瞬間をすくい取るように。 これは、世界のどこかで息づく人々の、小さな「場面(シーン)」の記録です。by-魚住 陸 Riku Uozumi

2026-06-01から1ヶ月間の記事一覧

SCENE#362 Dear boy...

第一章:遠い街からの手紙 拝啓、親愛なる君へ… この手紙が君の手元に届くとき、君はどこで、どんな空を見上げているのだろうか。きっと君のことだから、いつものように少しだけ眉をひそめながら、真面目な顔でこの古びた便箋を開いているに違いないだろう。…

SCENE#361 原子心母 Cosmic Mother

第一章:塵の海を往く老兵 灰色の砂嵐が、宇宙戦艦「アイアン・デューク」の厚い装甲を激しく叩いている。そこは、かつて数千億の生命が息づいていた大銀河の中心部ではなく、強力な素粒子兵器の無差別投入によって、すべての天体が原子レベルで粉砕された暗…

SCENE#360 主役になれなかった男 Never the Star

第一章:夕暮れの室内練習場 華やかな歓声も、勝利を称えるための派手な音楽も、一切届かない場所。プロ野球の常勝球団として知られる「東京ビーグルス」の本拠地スタジアム。その地下深くにある室内練習場は、夏の遠征試合が始まったため、普段の賑やかさが…

SCENE#359 蛍祭り Love at the Firefly Festival

第一章:暗いドームの解説席 商店街の路地裏にある古い科学館の三階に作られたプラネタリウムのドームは、昼の時間であっても、常に深い夜の闇と同じ暗さに保たれている。二十六歳の青年、星野秋人(ほしの・あきと)は、ドー厶の中央に置かれた大きな投影機…